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男「人間やめたったwwwww」【後編】







―――――数分後―――――

蛇口をきつく締めて体を拭く。
鏡の中には、風呂上がり効果で平常時よりシュッとして見えるが、不機嫌そうな僕がいた。
その後ろにはお義姉さんが立っている。

「義弟、そのき――」

「なっ、なにしてるんですかあなたはあああ!」

慌てて前を隠す。

「何って、様子を見に来たんじゃない」

「何も今じゃなくたっていいでしょうが!」

「馬鹿ねぇ。裸じゃなきゃわからないから今来たんじゃない」

「だからって全裸じゃなくたっていいでしょうが! サンタフェ!」

「あー、もー。じゃあ廊下で待ってるから、パンツはいてらっしゃい」

「なんでうんざりしてるんですか! こっちがうんざりですよ!」

「なによ。細かいわね」

お義姉さんはわざとらしくため息をついてバスルームを出た。
廊下に出ると、彼女は僕に後ろを向かせた。

「やっぱり。この傷どうしたの」

「傷なんて――腕ならさっき怪我しましたけど」

もっとも、その腕はもう治りかけている。

「違う。背中よ」

彼女は僕の背中の傷があるらしいところを指でなぞる。
一瞬、息がとまるほど冷たい指だった。
一、二、三。

「ほら、ここんとこ。爪で作ったみたいな傷跡」

脳裏に、ぼうっと光る母猫の姿がよぎった。
「まさか、まだ祟られてるんじゃ――」

「いえ、それはないはずよ。彼女はちゃんと逝ったもの」

「どうして」

お義姉さんは無言で、僕の右手から指輪を抜き取った。

「こんなもの、渡さなければよかった」

彼女は忌々しそうに言って、指輪を飲み込んだ。

「あ――」

「あれは、生きようとする力を増幅して、想像力で形を与える装置みたいなものよ」

「ええ、まあそうなんでしょうけど。別に副作用なんてなかったですよ」

「君が普通の人間なら、エネルギー源があっさり尽きてた。
 枯渇したところからさらに絞ったから体に負担がかかったんだわ」

「俺の魂に猫耳と猫しっぽが生えてるからって、そんな大変なことにはならないでしょう」

「あそこで力負けしてても、私が手を打てたはずよ」

聞いているのかいないのか。

「でも、あの場は切り抜けたんだし、今後も盾は使えた方がいいと思うんですけど」

「なに言ってるの! あなた人間やめたいの!?」

「え」

「あなたは人としての限界を超えた」

「それって、まずいんですか」

「人間じゃなくなる程度にはまずいわね。魂レベルで済んでた子猫との共存が――バランスが崩れる」

友好的だった僕と子猫の関係に亀裂がはいるということだろうか。
それは嫌だ。
あいつから母親を奪っておいて、その上敵対なんかしたくない。

「今は主導権をあなたが握ってるからいいようなものを。
 もし、もう一度人としての一線を越えたら、主従関係は逆転する」

「別に主従関係でなんか――」

僕は、あいつのご主人さまなんかじゃない。

「その体を使ってるのは、今は義弟よ。
 でも、主導権が逆転するってことは、表に出てる人格が子猫に移るということ」

「化け猫のような人間になるってことですか」

「人間のような化け猫かもね」

彼女は、短く鼻を鳴らした。
後悔しているらしかった。

「とにかく、この件に関しては、あなた達を前線には出さない。相手が悪いわ」

「でも俺、なにもできないのは嫌です。役立たずにはなりたくないです。
 志乃のこともあるし、正直犯人は倍返しくらいにして叩きのめしたい」

「役には立つわ。あなたは今までどおり、被害者や犯人の関係や、その背景のことを考えて、私に教えてくれればいい」

「それは、誰にでもできることだと――」

「いいえ。私にはできないことよ。協力してちょうだい。人間でしょ」

彼女の目が僕の目を覗きこむ。
脳まで焼きつきそうな視線だった。
熱いような、痛いような。
地獄とはどういうことだろう。

お義姉さんは、「少し眠るわ」と言って事務所に戻った。

(地獄の門番ねぇ……)

僕は全く語られない彼女の身の上について考えながら、休憩室の戸を開けた。

休憩室には布団が敷かれ、志乃はその上に仰向けに寝ていた。
針は見えない。
消えたか、体の中に入ったのだろう。
気を失ったままのグレイ君は、並べた座布団に転がされている。

(この扱いの差……)

お義姉さんは身内には甘い。
グレイ君が目覚めたとき、何も察しないでいてくれることを祈ろう。
志乃のそばに腰を下ろす。
手首を取ってみるが、脈がない。
呼吸もしていないのか、胸や腹が上下しない。
本当に生かしてあるのか不安になったが、体温はある。
彼女を元通りにするには、きっと呪いの元を何とかしないといけないんだろう。

(でも、なんとかって――)

相手は既に一人殺している。
動機によっては、自棄になって巻き添えが出ることも厭わないだろう。

「でもなー」

僕にはその動機を探る手掛かりがない。
手足を投げ出して寝転がった。

「っと。なんだこれ」

手の甲に当たったものを寄せる。

(じゆうちょう……)

なつかしの、動物の表紙の学習帳だ。
僕もこの罫線のないノートは好きだった。

(そういえば彼は不気味な絵ばかり描いてるんだったか)

何気なくページをめくる。
小五にしては上々の画力だ。
最初の方のページには、今では見分けのつかない特撮ヒーローやポケモンが描いてある。
僕もそういったものが好きだった。

「うまいなー」

素直に感心しながら、もし彼が同級生だったら尊敬しただろうとも思う。
僕は、今よりずっと素直で、ばか正直に感動することが得意だった。

(その後はエロスへのネバーエンディングな興味が加わるんだけどなー)

ページを繰っていくと、突然画風が変わった。
拷問される罪人と灼熱の要素を除いた地獄。
馴染みのある風景に、牙のある化け物や、肉が腐り落ちそうな巨大な獣、水棲生物が召喚されている。
空は瘴気を思わせる色で塗りつぶされている。
思わず見入っていた。

「か、返してよ!」

いきなり、ノートが乱暴に取り上げられた。

「うあぁ、わりい」

目を合わせる前から、反射的に謝っていた。
グレイ君が目を覚ましていた。

「勝手に見てごめん。それ、最近描いたやつだよね」

「そうだけど。お、お兄さんには関係ないだろ」

僕を睨んでいるが、体の向きは逃げている。
勇気を出しての抵抗らしい。

「ここどこ」

「どう説明したものかな……」

嘘はばれる気がした。

「ここ二、三日で君の友達が亡くなったよね」

「……」

「君のお母さんは、君のことをすごく心配してる」

「僕に、こんな気持ち悪い絵描くなって怒る……」

不満そうだった。
わからないでもない。
彼が何を思ってこんな絵を描いたのか知らないが、親としては懸念の元だろう。

「それで、お母さんは心配しすぎて眠れなくなったり、食事を取れなくなったんだよ。
 ここまで落ち込むと、すぐ元気にはなれないよね?」

グレイ君はうなずく。

「ここは心の病院みたいなところなんだよ。カウンセラーって知ってるかな」

「聞いたことは、ある」

「ここの所長さんは、そういう仕事をしてるんだ。
 お母さんの気持ちが楽になるように、話を聞いてあげる。
 この部屋は休憩室。あっちはオフィス」

事務所の方を指さす。
彼の首がそっちへ回った。

「おかあさん、来たの」

「うん。それで、君の友達が亡くなったことで、君が深く傷ついたりしないか心配だって話していった」

僕は沈黙による嘘をついた。

(まさか息子が、事故死した友人に呪われて死ぬのを危惧した、なんて言えないよなぁ)

「お母さんは、頭ごなしに君の絵を叱ったわけじゃないんだよ」

「でもこれ、僕の味方なのに!」

グレイ君はページを指差して、僕に訴えた。
怪物の後ろに、何かから引き剥がそうとつかみかかっている男の子が見えた。

「これは、亡くなった友達?」

直感だった。

「うん。まさと。台風の夜」

最初に亡くなった子は「まさと」というらしい。
初めて彼の名前を呼ぶ人物に当たった。
グレイ君は、本当にまさと君の友達らしかった。
なんだか目の奥が熱くなって、喉が詰まった。

事務所の方で、何かが派手に割れる音がした。
苛立ったお義姉さんの仕業かとも思ったけど、彼女が物に当たるのを見たことはない。
グレイ君は怯えているのか固まっている。

「こ、今度はなに」

「わからない。このお姉さんは大丈夫だから、君は俺がいいって言うまで押入れに隠れてるんだ」

グレイ君は小刻みに何度もうなずき、這って押入れに入った。
僕は彼が体を丸めるのを見届けて、ふすまを静かに閉めた。

(どうする? 僕に武器はない)

お義姉さんなら大丈夫だろう。
あの人は強い。
志乃は物理的に、呪いに対抗していた。
特に霊的な力がなくても、こちらが向こうを認識していれば触れることができるのかもしれない。

(でも僕に、あんな力出せるのか?)

――ニャーン。

どこかで猫の声がしたような気がした。
お義姉さんに指摘された背中の、傷があるらしい部分がうずく。

「うっ、ぐ……がっ、あ、はぁっ……」

焼けつくような痛みが鼓動に連動する。

「お兄さん大丈夫?」

ふすまが少し開き、グレイ君が囁いてくる。

「だ、大丈夫。ちょっと怪我したところが痛むだけだから。
 君は静かにしてるんだ。俺は大丈夫だから」

多分大丈夫じゃない。
僕の体に何か起ころうとしている。

――にいちゃーん。

(あー、間違いない。あの子猫……)

「なんだよ」

「誰と話してるの?」

「いいから。今度こそ自分で開けるなよ。じっとして、静かにしてろ」

ふすまが閉まった。
もう一度、事務所で何かひっくりかえった音がした。
応接セットのテーブルか、キャビネットか。

(ここを出るべきか……?)

だめだ。
僕がここを出たら、志乃とグレイ君を残すことになる。
急に静かになった。


ひた。
ずる。

廊下を誰かが歩いてくる。

ひた。ひた。
ずる。ずる。

何かを引きずっている。
鞄を探って、畳の上に転がった、グレイ君のものらしき小刀を手に取る。
いざとなったら、動けるのは僕だけだ。
戦い慣れてないなりに構えてみる。

(リーチみじけえ……気休めにもならねえ……!)

心もとない装備だけど、この部屋で調達できるのはこれが最強だ。
休憩室の入り口の、扉の裏にぴったりと体をつける。
こうしている間にも背中はじくじくと熱を持って痛む。
息をひそめるだけでも苦しい。
足音が部屋の前で止まる。
戸が開いて、足音の主が入ってきた瞬間。

「止まれ!」

飛びつくように背後を取って、腕で相手の首をロックする。

「動くな! 動いたら刺す!」

相手のあごの下に小刀を当てる。
これを引いたら、致命傷にはならないだろうが、切れる。

(妙に大人しいな……)

でも、僕はこれ以上動けそうにない。
今ので度胸を使い果たしたようだ。

「――はぁ。ちょっと落ち着いたら?」

彼女は手に持っていた、ひきずってきたであろう物を畳の上に放った。
見覚えのある顔。
グレイ君の母親。
依頼人だった。

依頼人は気を失っているようだ。
お義姉さんは当てつけがましく、強く息を吐きながら僕の腕を解く。

「思いきりの良さは評価するけど、もっと観察するのね」

彼女は依頼人のそばにしゃがみ込み、仰向けにさせた。
その顔は青白く、唇は紫色だ。
どう見ても無事じゃない。

「その人、どうしたんですか」

「大人しくさせるついでに保護したのよ」

お義姉さんは依頼人の胸に掌を当て、強く押した。
依頼人は何度か激しく咳き込むと、安らかに寝息を立て始めた。

「大丈夫。眠ってるだけよ。直に目を覚ますわ」

腕組みをしようとしたところで、腕がぬるぬるしていることに気付いた。

「うわあああ!」

血。
いつ付いたんだ。

「それくらいでうろたえないでくれる?
 今、君が私の首を固めたときについたんでしょ」

(首――?)

彼女は立ち上がり、僕と向き合った。
喉の横が切れて、血が肩まで流れている。
血の染みは肩口まで達し、白いブラウスを無残に汚している。

「首を切られたのは、今月で二度目ね。
 本気で私を殺しにかかってるわ。死なないけど」

彼女は迷惑そうに首を擦る。
傷はもう塞がっているようだ。

一旦は警戒を解いていいらしい。
現状を確認したい。

「何があったんですか?」

「この人ね、取り憑かれた状態でオフィスにきたの。
 敵も頭を使ったわね。依頼人だから警戒しなかった。
 まさか攻めてくるとも思わないしね」

「それじゃ、犯人は依頼人を取り殺すつもりはなかった、ってことですよね」

「おそらく。襲撃させた時点ではね。
 その後どうする気だったかはわからない」

押入れの中のグレイ君に声をかけてやるべきだろうか。
今、眠る母親に対面させていいものだろうか。

「でも、今回ばかりは頭にきたわ。もう我慢できない。巣をブッ叩くわ!」

「巣って」

でも、その表現は正しいのかもしれない。
あの川ではクリーチャーみたいな呪いが、子供をひきずりこんで殺そうと蠢いている。
今まで見た、どんな呪いよりも有機的で、グロテスク。
そして、何より明確な意図を持っているように思える。

(じゃあ、その意図ってなんだ?)

「さあ、義弟。働きなさい」

「何をしろって言うんですか」

「被害者! 現場! 発生状況! 繋げてみせなさい。
 動機を、犯人を割りだすのよ。人間でしょ。それくらいやってみせなさいよ」

「俺、分析なんて――」

「そんな難しそうに構えるからできないと思うのよ。
 一つずつ片付けるわよ。この件の被害者は?」

「子供。最初に亡くなった子の――仲良しグループのメンバー」

(仲良しってのも、表面的だけどな)

長野から聞いた話を思い出して、気分が沈む。
今のところ、まさと君の友達と呼べるのはグレイ君だけだ。

「現場は? 状況は?」

「最初の――いや、まさと君が亡くなったのは、台風が来た夜。
 増水した川に、多分落ちたのかな。そこで溺れた」

「次の子は?」

「水位がまだ戻ってない、まだ危ない状況の、あの川で――
 で、俺達が事情を聞きに、まさと君の家に行ったら、ああなってて――
 そしたらその、今保護してる彼が――」

「そこに妹が飛び込んで、今はこの有様よ。むかつくわ」

「お義姉さん、志乃のこととなると口が悪いですね」

「当たり前じゃない。言ったでしょ。あの子は血を分けた妹みたいなものよ。
 可愛い身内に手を出されて怒らないなんて保護者じゃないわ」

今。
回答を突きつけられたような気がした。

「お義姉さん、鬼だからって、人間のことわからないわけじゃないです」

「なに?」

「多分、今、自力で動機に辿りつきましたよ。犯人にも」

「私はなにもわかってないわよ」

「犯人は親ですよ。両親のどちらかはわからないけど、依頼人と接触できたことから、多分母親。
 動機は息子の道連れ。だから特定の子供だけを襲った」

「な、何よ。それだけでわかるの? 私と話しただけで?」

「お義姉さん、たとえばの話ですよ。
 たとえば、志乃を殺されるか、瀕死まで追い込まれたらどうします?」

喩えとしては短絡的だけど、わかってもらうにはこれくらいでいい。

「犯人を殺すわ」

「そういうことですよ」

彼女はしばらく不思議そうな顔をしていたけど、すぐに目的を見つけた目つきになっていた。

「わかった。もう一度、親を、母親を当たってみる」

彼女の視線は、志乃に向かっていた。

――もう少しだから、待っててね。

そう言いたそうに見えた。

「今日はやめた方がいいです。家を空けてたのは、たぶん葬式ですよ」

「手ぬるいわね」

「そうじゃなくて。俺だってさっさと片付けてほしいですよ。
 でも、まさと君の葬式ですよ。それに、まだ母親が犯人と決まったわけじゃない」

彼はちゃんと最後のお別れをしてもらうべきだ。

「どうしろってのよ」

「せめて、一晩待てませんか」

「一晩……一晩ね。それ以上は待たない」

「この親子、どうするんですか」

「落ち着いたら家に送っておくわ」

聞こえた子猫の声のこと、言うべきだろうか。

「あの、お義姉さん――」

「なによ」

「志乃に血を分けたとき、あいつ何て言ってました?」

(次に、僕が無理やり力を引き出した場合は――)

「そうねぇ。すごく短い時間でひどく迷ってたわ。当たり前よね」

彼女は志乃を見つめる。
その視線は愛しい者へ向けるものだった。

「あの子、『こんなところで死ねない。私、生きる』って言った。
 あの子らしいというか、まあ、素直よね」

「そう、ですか」

日没後、依頼人が目を覚ましたので、お義姉さんはグレイ君親子を家に送っていった。
彼女が帰ってくるまでは、念のため事務所を施錠するよう言われたので、そうした。
事務所の照明を落として振り向くと、小さな三毛猫がいた。

「ニャーン」

暗いのにはっきり視認できるあたり、今の僕はいわゆる「ぶり返し」ている状態らしい。

「久しぶりだな」

今ならグレイ君はいない。
猫と喋ってても、不審がる人はいない。

「にいちゃーん」

子猫は音も立てずに絨毯の上を駆け寄ってきた。

「ずっと謝りたかったんだよ。母ちゃんのこと、ごめんな」

抱き上げると体をうねらせる。
嫌がってるんだか喜んでるんだか。

「母上、ぼくがねんねしてたらあえるの。さみしくないにょー」

と、口を開ける。
小さいがしっかり尖った歯が、行儀よく並んでいてかわいい。

(夢に出るってことかな)

「うんうん。いい子いい子」

「ぼくっていい子ちゃーん」

しなる尻尾が僕の腕に当たる。
毛の感触が柔らかかった。

「そうだ。お前は女の子ちゃんだから、『ぼく』は卒業だぞ」

「ニャーン」

子猫は僕の手から抜けて床に飛び降りると、休憩室に向かっていった。

「都合悪いと人語を忘れるんだな……」

自分の可愛さを利用するあたり、しっかり女子だった。

「ねえちゃん、ねんね」

子猫は志乃の脇腹に鼻を押し付ける。

「うーん、寝てるのとはちょっと違うんだけどな」

「しんじゃったにょー」

しっぽがつまらなそうに、ぱたぱた動く。

「生きてるよ」

「ぼくもおおきくなったらねえちゃんみたいになるー」

子猫は前足で志乃の胸を押している。

「うーん、それはどうだかなー。おまえは猫ちゃんだからな」

「ニャーン」

背中が熱いような気がする。
傷があると指摘された部分に手を当てて、体をよじった。

「にいちゃん、えらそうなおばちゃんあぶないにょ」

「確かに偉そうだけど、おばちゃんって言ったら怒られるぞ」

年齢不詳だけど、お義姉さんの見た目は二十歳かそこらだ。

「あの人は大丈夫だよ」

彼女が追い込まれたり、負ける姿が思い浮かばない。

(あ、でも通り魔に首を切られたんだっけ)

それでも。
彼女は強いはずだ。

「うあっ!」

焼きつくような痛みに、思わず声が漏れる。

「ぼく、たすけてあげる」

子猫が僕に向かって歩を進める。

「おまえ、俺を乗っ取るのか」

「わるいことしないにょ。ちょっとでていくだけにょー」

脇腹を僕のすねにこすりつけながら、足元をぐるぐる回る。
焼印を押されるのってこんな感じだろうか。
皮膚がピンポイントで溶けそうだ。
中の肉まで焦げつきそうに思える。
うまく息ができない。
どうやっても痛みを逃がせない。

「おまえ、何かしたか?」

「ないにょ。ぼくはおさんぽだけ」

「お前が出てったせいかな。正直、人生最大級に痛い」

立っていられなくなって、畳に転んだ。
そのまま何度か悶えた。

「頼むよ、戻ってきてくれ」

「ぼく、おはなししたかったの」

「また夢でできるだろ」

「にいちゃんねんねしないにょ」

確かに、志乃が助かるまでは眠れないだろう。
子猫が仰向けになった僕の腹に乗る。

「ねえちゃん、げんきになったらまたあそんでくれる?」

「うん。でも今の俺は元気じゃないので遊べないよ」

子猫はふんふんと鼻を動かした。

「ぼくがもどったら、にいちゃんげんきになる?」

「たぶん」

「ニャーン」

子猫は小さく鳴くと、小さな前足から僕の胸に沈んでいき、そのまま体の中に消えていった。
相変わらず、人に話したら頭がおかしいと言われそうな光景だ。
でも僕は、これを当たり前に受け入れるようになっていた。
目を閉じる。
痛みが畳をとおって、床全体に拡散していくような感覚。
僕は少しの間、失神した。

――――――――――

頭の上で声がする。

「起きなさい。変なところで寝ないの」

「う、うん……」

起こす上半身が重い。
さらにその上に乗っかってる頭はもっと重い。
背中の痛みはなくなっていた。
部屋の照明はついてないけど、お義姉さんだとわかった。
外から光が入ってくるが、表情はわからない。
暗くなっていたらしい。
一定の間隔で水の滴る音がする。

(水道なんか使ったっけ)

「うう、ああ……。あー……おかえりなさい」

「ずいぶん長い昼寝だったわね」

あぐらをかいたまま体をひねる。
節々がボキボキ鳴った。

「帰ってきたら入り口で寝てるなんて。やっぱり疲れてるのね」

(疲れはあまり関係ないような)

まだ寝ぼけたふりで、適当にうなってごまかした。

「あの親子、大丈夫でしたか」

「ちょっと厄介なのが待ち伏せしてたけど、片付けた。心配ないわ」

彼女は僕のそばに腰を下ろした。

(この匂いは)

鉄サビ。

「怪我してるんですか!?」

慌てて立ち上がり、照明からぶら下がっている紐をひっぱる。
リング型の蛍光灯が何度か点滅して、部屋を照らした。
入り口のあたりに血だまりができている。
着替えたばかりの、タートルネックのニットの色が暗くてわからなかった。
彼女は腹部を負傷している。

「あ、ああ、ああああああ」

救急車! と一瞬頭をよぎったけど、人間の治療なんて彼女には役立たないだろう。
情けないことに、うろたえるしかできなかった。

「騒ぐんじゃないわよ……。もう塞がりかけてるんだから」

脇腹のあたりに掌をあてがって、そう言い捨てた。
不機嫌そうなあたり、相当痛むらしい。

「妹は? おかしな様子はない?」

「ええ。安定してます。ずっと寝てる」

「そう。ならいいの」

お義姉さんは壁にもたれた。

「ねえ」

「はい」

「お茶を淹れてちょうだい」

この場合、彼女が言うのはジャスミン茶を指す。
ガラスのポットの中で花が開くみたいなお茶。
志乃は喜ぶけど、僕にはいまいち美味さがわからない。
いい匂いだとは思う。

――――――――――

お義姉さんの語気が、僕が無駄に喋ることを許さない感じだったので、僕は大人しく従った。

(一日に二度も傷を負うなんて、本当に手を焼いてるんだな……)

「どうぞ」

と、彼女の左側に盆を置く。

「……」

不服そうな顔。

「あの、何かまずかったですか。そりゃあ俺はこんなの不慣れですけど」

「腕が上がらないのよ。注いで持たせてちょうだい」

「ああ。……どうぞ」

言われたとおりにする。
負傷した左の脇腹から、右手を離した。
その手のひらには、血がべったりとついていた。
お義姉さんはこの世の者ではないけれど、その血は僕らに流れている血と同じに見えた。

「あの、何があったんですか」

彼女はカップに口を付け、まだ熱い茶を躊躇なく一気に飲んだ。

(それ、もうちょっとちびちび飲むタイプのお茶なんじゃ……)

長く息を吐いて空になったカップを置く。
取っ手が血糊で染まっていた。

「だから。言ったとおりよ。依頼人親子を送って行った。
 そしたら待ち伏せされてた。このとおりダメージはあるけど、ちゃんと始末したわ」

違和感があった。
三人でまさと君の家に行って、僕が腕を怪我したとき。

――あそこで力負けしてても、私が手を打てたはずよ。

そう言った。
彼女は自分の強さに絶対的な自信を持っている。
最初の事件なんか、呪いの塊を一刀両断にしてたし、
上木さんのときは、猫の姿のまま解決していた。
誇るだけのことはある。
彼女は強い。

――それなら。

その腹の傷は何だ。
依頼人の家にトラップ的に置いておく呪いなんて、本体よりは弱いはずだ。
こんなにてこずるなんておかしい。

「そのけが――」

「うるさいわね」

彼女は空いた右手で、また傷を押さえている。
僕に小さく謝ると、上を向いて、ふうっとため息をついた。

「傷に響くのよ。少し黙ってて」

なんとなく動けないまま、時間が流れた。
数十秒だったか、数分だったか。

「春海君、話しておくことがあるわ」

珍しく名前で呼ばれた。

僕に向き直った彼女は、どことなく志乃と似ていた。
文字通り血を分けたせいかもしれない。
志乃が大人になったらこんな感じだろうか。
でも、しばらく会わないでいると、僕は彼女の顔を忘れてしまうのだ。

「そうね――どこから話したものかしら」

彼女は目を伏せ、眉間にしわを寄せた。
何度か深く息をして、彼女は語り始めた。

「私の名前。言ってなかったわね」

「ナオミじゃないんですか」

「言ったでしょ。お店の名前はナオミ・キャンベルが頭の中で歌ってたからだって」

「ああ。あれ本当だったんですか」

「そんなことで嘘ついてどうするのよ」

お義姉さんの口元が歪む。
苦笑したのかもしれない。

「私は、環」

「意外とふつうですね」

「普通でいいのよ。名前なんて」

「良い名前なんじゃないですか」

彼女が何を言いたいのか、まだわからない。

「私、きっともう長くないのよ」

喉が締まった。
何も言えないのに、肺が驚嘆の声を絞ろうとするものだから変なうめき声が出た。

「ああ、そんな悲しむようなもんじゃないのよ。
 私という個体の保持が難しくなってきてるだけ」
「それ、やっぱり死ぬって言ってるように聞こえます」

「私たちみたいな鬼はね、何度も命を終えては始めてる。
 今は何度目かしら――わからないわ。前の生は覚えてないもの。
 そもそも私に備わってるものが命なんてものかも――」

「なんで今、俺にその話をするんですか」

「今回ばかりは、敵と差し違えることになりそうだから。
 あの子に話したら、きっと泣くわ」

「俺だって平気じゃないです」

「嬉しいこと言ってくれるわね。でもなんだか辛いわ」

「あなたが、ただの鬼じゃないってことじゃないですか」

志乃が目覚めたら、なんて言えばいいんだ。
悲しむのは目に見えてるし、取り乱すに決まってる。
なにより、僕だってこの人のことは決して嫌いじゃなかった。

「即席で、ままごとみたいな家族だったけど、私は満足してたのよ」

彼女は目を開けて、志乃を眺めた。
無事を確かめているようだった。

「お義姉さん、もしかして回復が追いつかないのって、志乃を――」

「それは関係ないわ」

早口で遮られた。
志乃をああやって眠らせておくことで、彼女は消耗し続けているようだ。

「じゃあ、なぜ血が止まらないんですか!」

「あー、もー。うるさいわね。目の錯覚よ」

「そこまでして、志乃が呪われてなかったら徒労じゃないですか……」

「そんなことない。あの子の中に呪いが入った可能性がある限り、保険をかける意味がある」

「志乃が知ったら怒りますよ」

「そう? 喧嘩上等よ」

お義姉さんは蒼白な顔を向けて笑った。
彼女は壁にもたれながら、ずるりと立ち上がる。

「それじゃ、あの子によろしく」

壁に手をつき、戸に手をかける。
彼女はそのまま、よろけながら事務所を出る。
僕はそれに、おろおろしながらついていく。
壁には、なすりつけたように血が残っている。

「まさか、あの家に――」

「それ以外にどこへ行くっていうのよ。時間がないの」

何か言わないといけないと思って口を開いたけど、言葉が出てこない。

「行くわ」

慌ててドアを開けようとしたお義姉さんの手を押さえる。
相変わらず冷たい手だった。

「せめて志乃に、何か伝える言葉を残してください。
 ほんとは嫌ですけど、こんなの嫌ですけど――」

遺言を預かれば、僕は彼女の死を認めることになる。
彼女には不死でいてほしかった。
この程度の出血、志乃と血を分け合って助かったように、
そのへんの人たちからちょっとずつもらってやりすごしてほしかった。

「こういうの、苦手だわ」

「今更『私には感情がないもの』とか言い出さないでくださいよ」

彼女は僕の手を取る。

「愛してるって。そう伝えて」

「洋画の見過ぎですよ」

「ばかね、泣くんじゃないわよ」

「俺、嫌ですからね。
 ちゃんと戻ってきて、自分で志乃を起して、それから自分で言ってくださいよ」

彼女は呆れたように唇だけで笑うと、事務所を出て行った。

彼女は飛んで行ったのだろう。
もうすぐ死ぬわ、なんて言ってる人が、悠長に人間と同じように移動するわけがない。
彼女は最悪、刺し違えることを覚悟していた。

(でも、もっと悪いことになったら?)

まさと君の母親はどうなる?
これからもまさと君の友達だった子を呪い殺し続けるのか?
志乃はどうなる?
今はお義姉さんが保険として仮死状態にしてるけど、それがきれたら?

お義姉さんの机の引き出しを開ける。
鍵を手に取る。

(行くのか? 志乃を置いて?)

でも、お義姉さんを一人で行かせたのは、リスキーだったように思う。

(僕が行って何になる?)

僕は人間だ。
盾を作る指輪は没収された。
盾を出して彼女をサポートすることもできない。

でも僕は、ドアノブに手をかけて、ドアを開け、外に出ている。
埃っぽいビルの廊下。
他のテナントはもう、営業を終了しているだろうか。
ふと、家族のことが気になった。
「遅くなる」と簡単にメールした。
僕は何をしようとしているんだろう。
僕が行っても何の戦力にもならない。
ただの足手まといだ。

(ちがうね)

そうだ。それは違う。
僕は知っている。
僕にも戦う手段が残っていることを知っている。

――ニャーン。

(ああ、ちゃんと応えてくれる)

やっぱり子猫はいい子だ。
無事に帰ってきたら、ナイスな名前を付けてやろう。
で、自分のことをぼくって言うのをやめさせよう。
僕には子猫を立派な淑女に育てる義務がある。

お義姉さんの忠告は、しっかり覚えている。
でも、このまま黙って留守番なんてしていられない。
志乃が彼女を失って泣くのも見たくない。
それに、僕だって彼女と離れたくない。

「猫、わかるだろ。俺の気持ち」

「わかるー。ぼくってかしこーい」

廊下をトコトコと足取り軽く進む子猫。
振りかえって、尻尾をぴんと立てる。

(何もできないでいるくらいなら)

子猫に向かって手を延べる。

「来いッ! 力を貸してくれ!」

「いいよー」

子猫は僕に飛び込む。

(人間でいることにこだわって、大事なものをなくすくらいなら)

体中の細胞がはじけるように熱く、目の前がちかちかする。
僕は少しよろける。
壁に手をついて目を開けると、暗い廊下のはずなのに、よく見えていた。
指を見ると、爪が伸びてとがっている。
窓ガラスに移った自分の虹彩は縦長になっている。
頭には三角の耳が生えている。

「悪いな。お前には物騒なことさせたくなかったんだけど」

「いーよー。ぼく、おばちゃんたすけるの、てつだってあげる」



――人間やめてやる。



――――――――――

交通機関なんか使っていられない。
僕は走る。体が軽い。
何人かが、ぎょっとした顔で僕を見たけど気にしない。
道なりになんか走っていられない。
方角は覚えている。
僕は確信をもって走る。
オフィスビルの立ち並ぶ市内中心部から住宅街へ抜けた。
僕は塀に飛び乗り、屋根に飛び移り、最短距離を行くことにした。
いつしか僕は、着地に手を使い、かかとをほとんど付けずに駆けるようになっていた。

目的の家はすぐわかった。
その周りだけ、命の気配がなかった。
鳥の影も、虫の声もない。
死んだようなその区画。

僕達を襲ったあのときのヘドロまみれのタコみたいな奴が、
まさと君の家の屋根に覆いかぶさって足を振りまわしている。
全てを壊したがっているように、なぎはらうように動かしている。
生きてる全てが憎くてたまらない。
そんな絶叫が聞こえそうな気がした。
ここまできて、僕は足がすくんでしまう。

何軒か離れた家の屋根から様子を窺う。
お義姉さんの姿を確認したかった。
彼女を見れば、あと一歩動けるような気がした

ひときわ高く振り上げた触手の先に、胴をからめ取られたお義姉さんが見えた。

(やばい、叩きつけられる!)

考えてなんかいられない。

「うわあああああああッ!」

悲鳴とも雄たけびともつかない叫び声をあげて、僕はうごめく暗黒に飛び込んで行った。

触手に向かって垂直に手刀を叩きこむと、ぬめりとぐにっとした感触があった。
切れない。
左手でつかんで右手の爪を伸ばしてひっかくと、傷口から腐った卵みたいな粘液が溢れた。
思わず鼻を押さえる。
解放されたお義姉さんが庭に落下する。

駆け寄って抱き起こす。

「お義姉さん! しっかりしてください!」

「なんでここに――」

彼女の言葉が止まる。
僕の頭の上で視線が止まっている。
察したらしい。

「なんて馬鹿なことを――」

「俺だって何も考えてないわけじゃないです。
 何もなくしたくなかっただけです」

「そう。話は後ね」

説教してやる、と彼女は呟く。
生きててくれるなら、是非されたいもんだ。

「悪いけど、君を庇う余裕はないの。
 危ないと思ったら、私を置いて逃げなさい」

敵は僕を見つけたようだ。

「そうしない為にここに来たんです」

タコ足の先を僕に向けて、呼吸するように吸盤を動かす。
完全に敵と認識されたようだ。

「口だけでもうれしいわね――くるわ!」

お義姉さんが僕を突き飛ばす。
僕の立っていたところには、タコ足が深々と突き刺さっている。

(これは……まともに受けたら死ぬるわ……)

「本体から目を離さないで! 怯えは隙に繋がる!」

彼女は剣を振るいながら僕に向かって叫ぶ。
なんとか戦えてはいるようだけど、攻撃を捌くので精一杯らしい。
この体が素早くて強いのはわかったけど、まだ慣れていない。
僕は僕で、逃げ回っている。
おとりにもなれていない。

「お義姉さん! これじゃ埒が明かないですよ!」

避けながら、なんとか彼女に近付けた。

「わかってる! 本体が奥に――!」

お義姉さんの腕に、触手が巻きつこうとする。
彼女はそれを食いちぎり、咀嚼して吐き出した。

「ちっ、やっぱりクソ不味いわね。こんなの取りこめない」

「本体って、昼に見たあのでっかい目玉みたいな――」

「そいつよ!」

「本体を殺せば、呪いは止まりますか」

僕もなんとか爪で応戦できるようになってきた。
でも、こんな気持ち悪いものから目を離さないでいるのは精神的に堪える。

「ああ止まるわよ! 君も見たでしょうが!」

彼女の腕の振りが鈍くなってきている。

「じゃあ俺が道を開きます!」

「何を言って――」

僕は盾を出す。
盾の中心を、円錐の頂点を想像してとがらせ、伸ばす。
突撃槍のイメージ。

「こんなの、たぶん一度しかできません。俺を盾にして突っ込んでください」

「義弟、つまらない男だと思ってたけど、結構イカレてるじゃない」

彼女は牙をむき出す。
笑ったらしかった。

「でなきゃ最初からあなたには付き合ってられませんよ」

僕らの疲労を見抜いたのか、タコ足が大きく振り上げられる。
隙だ。

「いきます! 俺と走ってください! 今しかない!」

「あんたに指図されなくたって見えてるわよ!」

僕らは走った。
僕は腕を前に突き出し、開いた腕で呪いを振り払いながら突き進む。
お義姉さんが剣を構えながら、僕の背中を押す。
何度も重く叩きつけられ、盾を落としそうになる。
掌の皮がむけそうに痛い。
足が上がらない。
でも僕は走る。

目の前に巨大な瞳孔が開かれた瞬間、お義姉さんが僕の前に躍り出た。

目玉の直径は僕の身長くらいある。
その真ん中に、ぽっかり開いた瞳孔。
そのさらに内側に、中年の女の顔が見える。
女の両目は閉じられて、血混じりの涙を流している。
片方の瞼は傷ついている。
恨めしくて悲しくてたまらない。
そんな風に見えた。

女の片目が開く。
お義姉さんの肩越しに目が合った――
が、彼女の眼窩はからっぽだった。

目玉を覆う角膜の向こうに見えるのは暗い海だった。
ランドセルが浮いている。
黄色い帽子が浮いている。
自転車が浮いている。
家族写真が貼られたページの開いたアルバムが流れていく。

僕等が対峙するこの目は、まさと君の母親の眼球だ。

そうだと確信していたけど、事実として突きつけられるときつい。
同情や憐憫に近い強烈な感情が噴き出してきて、手が緩みそうになるのをこらえた。
お義姉さんは剣を水平に構えて、体ごとぶつかった。
かなりの長物が、一気に半分以上突き刺さる。
呪いは苦痛の叫びを上げる代わりに、全ての足を僕らに激しく打ちつけようとする。
全身を打たれながら、お義姉さんは声を絞る。

「――あんたのせいで」

彼女はあごを上げ、片手を口のあたりへ持っていく。
何か取り出したのだろう。
その手には短剣が逆手に握られていた。

「あんたのせいよ……」

彼女は長剣の柄頭に掌底を叩きつけ、さらに深く刺す。

「あんたのせいで! 私! 死んじゃうじゃないの!!」

何度も、何度も、何度も。
彼女はヒステリックに短剣で刺す。

「ゆるさない」

彼女は止まらない。

「もう、いいですよ……」

志乃にまで危害を加えようとしたことは許せないが、
彼女はもう罰を受けてるんじゃないか?
僕の声は、お義姉さんには届いていない。

「あんたは妹に手を出した」

彼女はまさと君のお母さんを殺すつもりだ。

「もういいです」

呪いを殺せば、志乃は助かるじゃないか。
彼女は最愛の息子を失って、罪を犯す前から罰を受けてるじゃないか。

「ぜったいにゆるさない」

本体もろとも呪いを殺すつもりだ。
彼女は短剣の刃を鍔元まで押し込むと、爪を立てて目玉の角膜を掴んだ。

「この先――」

両手で角膜を突き破ると、黒く濁った硝子体が粘り気を持ちながら流れてきた。

「私にも!」

「私の妹にも!」

「私の義弟にも!」

「誰であろうと!」

彼女は、流れてきた中に漂う、女の顔を掴んで床に叩きつける。

「殺す」

振りかぶり、打ちつける。

「手を出したら殺す」

何度も。

「お前が審判を待つ間も!」

何度も。

「地獄のどこにいようと!」

何度も。

「おまえの魂が砂粒ほどになっても」

「私は情けをかけない。容赦しない」

「拷問人から仕事を奪ってでも殺してやる」

「輪廻の先まで追いかけて殺してやる」

「何度でも殺し直してやる」

僕が腰を抜かしている間に、彼女の報復は済み、呪いは消えた。
ふらつくお義姉さんを支えようと、立ち上がろうとしたけど激痛で立てなかった。
足が折れているらしかった。
近くに落ちていたゴルフクラブを拾って、杖がわりにして彼女に近づく。

「本体、潰してやったわ」

玄関から続く廊下を、初めて見た。

「見ればわかります」

今まで、この家は呪いで覆われていた。
この家が呪いそのものみたいだった。

「お義姉さん、本体の――まさと君の母親ですけど、殺さないでやってくれませんか」

彼女は満身創痍。
でも、人を呪って弱った人間一人くらいなら、命を奪うくらい造作もないことだろう。

「できないわよ。もう死んでたんだから」

彼女は視線で廊下の先を指す。
喪服の男女が一人ずつ。
顔や致命傷を確認してないけど、死んでいると確信した。

「けっけけけけ警察! あ、違う! 救急車!? どっち!?」

こうやって慌てるあたり、人間やめきれてない。

「無駄よ。明日の朝イチ、隣人にでも発見させなさい。
 これだけ荒れてて玄関開きっぱなしなら不審がって通報してくれるわよ」

彼女は貫かれていた腹を押さえて立ち上がる。

「ドアノブとかべたべた触るんじゃないわよ。
 指紋出たらめんどくさいんだから。
 あんまりあの世に手間かけさせるのもなんだしね」

「思いっ切り血痕が残ってるのはいいんですか」

「いいのいいの。あの世がなんとかしてくれるわ」

「今、手間かけさせるのもなんだって言ったじゃないすか」

「こまかいことはいいのよ。さ、帰るわよ」

彼女は僕の襟首を掴んで、深夜の夜空へ飛び出した。
魔女がやる滑空みたいだった。
今までの瞬間移動みたいなものじゃない。
そうする力は残っていないみたいだった。

―――――ナオミの部屋・休憩室―――――

志乃は目覚めていて、窓の外をぼうっと眺めていた。

「志乃、ただいま」

彼女は振り向くと、いきなり泣きそうな顔になった。
瀕死のお義姉さんを見てか、僕の姿を見てか。
たぶん両方だろう。

「おねーさん! 春海!」

志乃は僕にすがりつきながらお義姉さんを支える。
布団に寝かせようとしたけど、拒否された。

「ああ、横になるのはやめとくわ。永眠しちゃいそう」

僕は彼女を抱き起こしたままにする。

「春海、その格好――」

「そんな顔するなって」

自分のせいで、と思っている部分があるんだろう。
やりきれないような、生きててくれてよかったと喜んでいるような。
今ならわかる。
僕も、そんな顔をするしかなかった。

「俺はかわいそうじゃないし、自分で決めた」

「でも!」

「俺が、全部自分で決めた」

僕は志乃が眠っている間にあったことをかいつまんで説明した。

「死にかけてるお前と、重傷のお義姉さんと、
 親友の母親に狙われたグレイ君のこと考えたらさ、戦えない自分が悔しかった」

今ならよくわかる。
志乃がお義姉さんの要求を飲んだときの心境。

「俺、子猫に頼んだんだ。
 力を貸してくれって。
 好きな人達を見殺しにしたくなくて、だから頼んだ」

お義姉さんの言っていたリスクは承知の上だった。

「元に戻れなくなるかもしれなかった」

志乃は目にいっぱい涙を溜めている。
義姉と僕が一度にただごとじゃなくなっているこの状況なら仕方ない。
何も言えないのも、仕方ない。

「でも、それでも戦いたかった。
 俺、お前を助けて――生きていたかったし生きててほしかった。
 ずっとくだらないことで喜んでいたかった。
 お前と生きてるって、ずっと感じていたかった」

志乃の頬に大粒の涙がこぼれる。

「それでさ、肚くくって、子猫に頼んで」

なんでもないことのように笑うしかなかったのだ。

「人間やめたったwwwww」

志乃は、ああ、とか、うう、とかいったうめき声を上げて、僕とお義姉さんにすがりついて泣いた。
でも、何かから解放されたみたいな泣き方だった。
肩を抱くと、ちゃんと温かかったし、呼吸も伝わった。
これが僕の救ったものだと思うと、これでよかったんだと思った。

「でもっ! でも春海、こんな格好じゃ不便だよ!」

その後のことは、あまり考えてなかった。

「確かに男に猫耳猫しっぽはキツイな……」

「そういう問題じゃなくてえええええ」

「あーもー、うるさい。傷に響く」

お義姉さんは体をひねって、手のひらを僕の頭から体に滑らせた。

「あ、消えた。やったね春海! これで外に出れるよ!」

「それくらい自分で隠しなさいよ。半分化け猫なんだから」

彼女は呆れて笑った。

「じゃ、私はしばらくあの世に帰るわけだけど――」

(嘘だ)

「今度はいつ会えるかわからないから言っておくわ。
 志乃、私を助けたのがあなたでよかった。愛してるわ」

志乃は声を詰まらせながら泣いている。
僕も鼻の奥がつんとくる。

「ああ、義弟は志乃の次くらいに愛してるわ」

最後まで僕はぞんざいな扱いのまま。
でもそれでいい。
彼女はちゃんと自分で言えた。

「そんなにじっと見られたら、帰ろうにも帰れないじゃない」

「だって、だって――」

「二人とも泣かないの。ほら、外。流れ星――」

お義姉さんが開いたままの窓のを外を指さす。
ビル街の夜空の明るさに負けない眩しさで、
白い星がしゅっと尾を引きながら流れていった。
腕が軽くなる。
彼女は消えていた。


(彼女って誰だっけ)

僕はなくしたものが何かわからないまま、深い喪失感を抱えて気を失った。



―――――文化祭の日・図書室――――


「ありがと。紙って意外と重いから男子がいると助かったよ」

僕は志乃と長野と一緒に、神田さんと上木さんの文芸部の手伝いをしていた。
僕は志乃と原稿の入力を手伝っただけ。
長野は僕についてきただけ。
でも、少しでも自分の手を貸したものが形になると、気分がいい。

「で、あれからどうよ。妹ちゃん学校行ってんの?」

段ボールから冊子の束を出して机に積んでいく。

「うーん、しぶしぶ行ってた」

ついこの間、僕は志乃と一緒に気色悪い正体不明な、説明しがたい感じの化け物に遭遇した。
で、いろいろあって二人でやっつけた。

(ぼくって半分ねこちゃーん。ニャーン)

僕の中の子猫ちゃんな部分が、たまに茶目っ気を出して思考を邪魔してくる。

「元気出してくれるといいな」

志乃は僕の体液と取り込むとやたらいきいきするし、油断すると馬鹿力が出る。
そして妙に傷の治りが速い。
一方、僕は標準体型な割に人間離れした身体能力がある。
なぜか夜目も利くし、動物の言うことがちょっとわかる。
お互い妖怪チックだとネタにして笑っている。
笑えるけど、普通の人を装うのはちょっと面倒だ。
いつからこうなったのか、はっきりわからない。
これは二人の秘密。

(ちがうもーん。ふたりじゃないにょー)

「ああ、またノイズが――」

「ノイズ?」

「別に放送かかってないでしょ」

文芸部の女子二人が不思議そうな顔をする。

「いや、ごめん。なんか聞こえただけ」

「春海は耳いいもんねー」

脚立のてっぺんに座った志乃が、足をぷらぷらさせる。


長野が人の行きかう廊下をじっと見つめる。
僕も、なんとなく窓の外を眺める。
髪の半分をアップにした、清楚な美人と目があった――
ような気がした。
こんな行事のある日でもなきゃ、図書室の前はにぎわったりしない。

「なに? 誰かいた?」

「知り合いかと思ったけど気のせいだった」

「なに? きれいなお姉さんなら好きだよ」

「いや、見失った」

志乃が脚立から飛び降りる。

「ねえ、それって黒いスーツの人じゃなかった?」

「教育実習的な?」

「そうそう。そんなんだったけど――。どっか行ったな」

胸が痛い。
なにこれ恋?
だめよ。志乃というものがありながら。

(いやいや。そうじゃなくて――)

志乃は何も言わず廊下に出ていく。
僕はそれを当たり前みたいに追いかける。

「あのっ――!」

志乃が呼びかけるけど、女はもういなかった。
彼女は迷子みたいに辺りを見回す。
僕もそうした。

「志乃、俺達、何か忘れてるよな」

「忘れてないと思うんだけど、つじつまが合わないんだよ。
 この一カ月、エラい目に遭ったけど――
 何かが、しかも重要なものが抜け落ちてる」

「だよなぁ……」

記憶に矛盾はない。
僕達はお互い『特異体質』で、人には見えないグロいものが見えたりして、
こんな
仲になってからは、それと戦ったりなだめたりすることで、なんとなく人助けをしてきた。

「変なこと言うけどさ、ほんとに俺達だけでやったのかな」

「何のこと?」

「その、化け物退治?」

「でもさ、私らの体質知ってるのって、他にいないよね」

「いないはず。いたらえらいこっちゃ」

「ですよねー」

志乃は油断したら犬歯が伸びるし、僕は頭から猫耳が出る。

「何か忘れてるんだよなー」

「ですよねー」

「……文芸部ほったらかしてもーた……」

「差し入れで許してもらおう」

女の人を探すうち、中庭まで出てきてしまった僕らは、適当に模擬店でいろいろ買い込んだ。

「うーん、青春ぽいですな」

前日までに押し付けられていた引換券の枚数の違いが、
ぼっち予備軍の僕と、友達に可愛がられている志乃の違いだ。

「俺はお前と長野がいないとぼっちだからなー」

「そんなかなしいこと言うなよ」

視線を感じて振り返る。
が、誰もいない。

「ねえ、やっぱり私たち何か忘れてるよね」

「何だろな」

「思い出せない……」

僕達は釈然としないまま、図書室に戻った。
が、図書室は飲食禁止なので、部室に幽閉された。
適当に交代で休憩しろ、と。

部室の外に、人影が見えた。
さっきの女の人だと直感した。

「何か?」

こういうとき、志乃は速い。
相手を二度、見逃すことはない。

「あ、あなた達、どこかで――?」

清潔に、上品に、すっきりと。
就職活動中の女子大生のお手本みたいな人だ。
美人だけど、整いすぎて見失ったら五分で忘れる顔だ。
懐かしいと思った。
志乃も、そう思っているはずだった。

「あ、あたしです。志乃です。こっちは春海」

「あの、あなた達は――」

彼女は困惑しているといったポーズをとる。
目の奥はちっとも動揺していなかった。

「ええと…人違いじゃないかしら。私、よく間違われるのよ」

言葉とは裏腹に、その声は全く困惑していない。

「そう? ほんとに?」

この人が僕らの何だったのかはわからない。
志乃が僕の隣で、少し開けた口の中を指差してくる。
指の先には、長い犬歯が光っていた。

「ちょっと見せてカマかけてみる?」ということか。

僕はそれを、手をかざして制する。
志乃はつまらなそうに唇をとがらす。

「なぜ俺達を尾行するんです」

このバレバレな尾行も、懐かしい気がした。

「あの、あなたも変な人みたいだから言っちゃいますけど、
 私達のこと、変だと思ったからつけてたんじゃないですか」

志乃の、髪の先が震えている。

「――わかったわ。まさかそこまで警戒されるとは思わなかった」

女が口を開く。
さっきまでみたいな、作った口調じゃなかった。

「あなた達、変なもの、見えてるでしょう」

あのグロかったりキモかったりするやつのことらしい。
なんだかわからないけど、普通の人には見えていそうにないので、
僕等も気付かないふりをして過ごしている。
僕等はだまってうなずいた。

「注意深く生活してるみたいだけど、無意識に避けてるものね。
 それ、人間からは、何もないのに大げさに何かあるみたいに迂回してる人みたいに見えるわ。
 道端の吐瀉物でも避けてるみたいに、あるいは顔の前の蚊柱を避けるみたいにね」

彼女は忠告しているようだった。

「我慢してるつもりだったんだけどな――」

「だって気持ち悪いんだもん」

「勘のいい人間なら気付くわよ。あれに対抗するのはいいけど、隠れる方法も身につけなさい」

「おねーさん、何?」

志乃がえらく挑発的な物言いをする。
女は少し寂しそうに見えたような気がした。

「私はあの世の住人。地獄の門番。鬼――好きなように定義するがいいわ」

彼女は、ここで初めて笑ってみせた。
そして、目を細めて僕らを凝視しながらつぶやく。

「半端な化け猫と――また中途半端な――吸血鬼? 夢魔?」

化け猫は僕のことで、吸血鬼とか夢魔とかいうのは志乃のことらしい。

「夢魔ってアレ!? サキュバスぅ!? ひどい! 私はそんなエロいのじゃないもん!」

「だってあなた――彼の淫の気が大好物みたいじゃない。
 彼の欲を精気として受け取る度に、己の美貌と力に転化してる」

「でも、志乃がそんな危険には思えませんけど。夢魔だったら死ぬまで吸ってきそうじゃないすか」

「だってあなた人間じゃないもの。そりゃ無事だわ。よかったわね、猫ちゃんが憑いてて」

「さっきから失礼だよ!」

イライラを募らせた志乃が、女の目の前まで爪を長く鋭く伸ばして突きつけた。

女はまばたきもしない。

「これ、人間相手に使ったことは?」

志乃の爪の先を、指の腹で押しながら女が訊く。
指を離すと、血が丸く溜まっていた。

「ない。でも、おねーさんは人間じゃない」

「寂しいこと言うのね」

「あなたが志乃に失礼なこと言うからですよ。
 普通の女子はあれを侮辱と取りますよ。謝ってください」

「あーもう、悪かったわよ」

志乃は爪を納めた。

「普通の、女子ねぇ」

「そう、女子」

「ちょっと変わってるけど概ね普通の女子です」

志乃が僕を睨む。

「あなた達、あれと戦えるなら私を手伝ってちょうだい」

「手伝う?」

「あなた達が見てるものは、良くないものよ。
 人に害をなそうとする意志。悪意。殺意。呪い。
 人を呪い殺した人間が来るとこなんて、想像つくでしょ?
 私は地獄の門番。私の役目は呪殺を達成させないこと。呪いを殺して、門前払いにすること」

「それって、いいこと?」

志乃が上目づかいに訊く。

「悪いことではないわね。それに、正体の隠し方も鍛えてあげられる」

志乃の意思は決まっている。
僕も、悪くない気がしていた。

この先――僕と志乃がうまくいって、さらにめでたいことに子供まで出来た場合、
きっとその子は普通の人間ではない。
人間の世界で生きる術を、教えられるようになっておくべきだと思った。

「乗った」

「俺も」

「じゃあ、気が向いたらここに来てちょうだい。私のオフィスよ」

と、彼女は名刺を置いて立った。
白い紙に濃いグレーで印刷してある。
黒じゃないのは、ソフトな印象を狙ってのことか。



『ナオミの部屋』



これが彼女のオフィスとやらの名前だろう。

「ひどい名前……」

僕が思ったことを、志乃がそのまま口にしていた。

「私は環。それじゃ」

僕の中で、何かがかちりと音を立ててはまった。
その図は漠然としていて、何が出来上がったのかわからない。
名刺を見つめる志乃の目がきらきらしている。
あれだけ険悪な雰囲気だったのに、彼女は懐かしいものを確信している。

「ねえ、明日、片付け終わったら――」

「行こう」

「いいの?」

「行こう」

そういうことになった。
きっと同じことを考えていた。
何より、そうであるべき形が戻ってきた気がした。

まだ暑い夏の終わり。夜は寒い秋口の頃。
半端な人間で、半端な化け物な僕等が、人間らしく生きるために人間離れしたことをしようと決めた話。

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No title

楽しませてもらいました。
新作期待してますよー!

「~たったwwwww」楽しませていただきました。
現時点で他作品がないのが残念です。
肚とか鬨とかちょいちょい引っ掛かる漢字がありましたが、古記みたいで非現実が感じられてツボでした。
次作も期待してます!

Re: No title

きーこーひー様

ありがとうございます。
人を楽しい気分にさせるのは素晴らしいことです。

近日中に何か書こうと思います。
よかったら、また見に来てください。

Re: タイトルなし

ぷにんぱ様

楽しかったと言っていただけると嬉しいです。
近いうちに、何か書きます。
ちょっとずつでも、コンテンツを増やしていきたいです。
またお越しください。

No title

まとめからですが読ませていただきました
面白かったです!!

最高でした!!

サスペンスあり、エロあり、アクションあり、エロありと最高でした(笑)
次回作(のエロ)楽しみにしてます

Re: 最高でした!!

ありがとうございます。
エロスなのは書いたり書かなかったりですが、
そして書いてもおまけ程度ですが、
気が向いたら読んでいってください。
プロフィール

ciza6sfeuc/白澤カンナ

Author:ciza6sfeuc/白澤カンナ
「人を楽しい気分にさせることは素晴らしいことなんよ」を座右の銘にがんばります。
twitterはじめました。更新お知らせ&ぼやき用です。本ブログの更新は不定期なので、良かったらフォローしてください。

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