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お題「思わせぶりな態度」

 抱えていた資料の山を放り出すように長机に置くと、彼女はパイプ椅子を引いて座り込んだ。

「ありがとう。それで最後だから」
「いろんなところが痛いです」

 彼女は背もたれに思い切りもたれて身を反らす。
 スカートの裾が持ち上がって太ももが半分以上むきだしになった。

「お疲れ。あんまり傾くとこけるぞー」

 どうしても目がいってしまうのを隠そうとしたら気付かれるだろう。
 ここは見えても気にしてないふりをする。

「悪かったな。他の奴も忙しくて」
「今から筋肉痛がきてます。若いから」

 頬杖をついて脚を組みながら愚痴をこぼす。

「今、遠回しに僕をおっさんみたいに言ったよな」
「トントンしてください。先輩ならお触りオッケーですよ」

 返事になってない。僕の抗議はどうでもいいらしい。

「またそんな思わせぶりなことを」
「うふふ」
「君、自分の可愛さ自覚してやってるよね」

 さすがに僕も疲れていたので、机を挟んで彼女の向かいに座る。
 コピー室と図書室を何往復もした。
 少々だらけてもいいはずだ。

「それ、あたしが可愛いってことですよね」

 頬杖からあごを外して、ぱっと笑顔になった。
 「可愛い」って言葉が栄養源みたいな、それだけで生きていけそうな喜びようじゃないか。

「はいはいそうね」
「先輩があたしのこと可愛いって。ふふふ」

 彼女は両手で自分の頬を包んで目を閉じ、うつむいた。
 上気してるのは動いたからだろう。
 僕だって暑い。唇を噛んで舐めると塩辛かった。

「何度も言うなよ。僕を弄んで気分がいいか」
「先輩をからかうのは楽しいですよ」

 うつむいたまま上目づかいに僕を見る目が笑っている。 

「いいリアクションしてくれるから先輩は割と好きです」
「割とってなんだよ。気を持たせて遊んでるといつか刺されるぞ」

 行儀が悪いとわかっていながら、胸ポケットにさしていたボールペンの先で彼女を指した。

「平気ですよ。気を持たれて困る相手には持たせないんです」

 彼女はそのペン先に人差し指の先で応じる。

「僕『で』遊んでるな?」
「先輩『と』遊んでるんです」

 「楽しいでしょ?」と、彼女は立ち上がってスカートの埃を払った。

「僕をからかって何になるんだ」
「むきになってくれるかなって」
「例えば?」
「あたしに触ってくれるかなって」
「それほんと?」
「この目が嘘を言ってる目に見えます?」

 僕を見下ろす目が思いっきり笑っていた。

「信用できねえ」
「ほんとですよ。ほら」

 と、手を差し出す。捕まって立てということか。
 そのとおりにしてやった。

「嘘じゃなかったでしょ?」
「そうね」

 まだ手が握られている。汗で湿っているのがすまない気がした。

「ほんとはもっと――」

 足音が近付いてくる。他の委員が帰って来たらしい。

「この状況でそそのかしてくるなんて君はほんと鬼だな」
「でも嘘つきじゃないです」
「思わせぶりなのはわざとだろ」
「先輩が疑り深いだけです」
「そんなに言うなら期待するぞ」

 彼女は「どうぞ」なんてわかりやすい答えはくれず、手を解いて僕の唇をスイッチでも押すみたいに触れて去っていった。
 もう一度舐めてみた自分の唇は、やっぱり塩辛かった。
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「人を楽しい気分にさせることは素晴らしいことなんよ」を座右の銘にがんばります。
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